在日韓国人の帰化要件(特別永住者の帰化要件)


行政書士 永井国際法務事務所

VISA申請や帰化申請にまつわる内容を中心に連載形式のコラムです

このコラムでは、「特別永住者」と言われる方々の帰化申請の要件について確認したいと思います。

「特別永住者」というのは、サンフランシスコ平和条約により日本国籍を離脱した旧植民地(主に朝鮮半島・台湾)出身者とその子孫で、日本に定住する人々を指す特別な在留資格です。具体的には、在日韓国人・在日朝鮮人と言われる方々等になります。

結論から言うと、特別永住者の帰化申請の要件は、いわゆる「簡易帰化」のそれになります。

典型的な簡易帰化の要件に当てはまるのは、特別永住者のほかに、日本人と結婚している外国人の方などがいます。

特別永住者の方で帰化を希望するのは、就職前に日本国籍になっておきたいとか、また、結婚する前に帰化しておきたいといったケースが多いようです。

つまり、公務員になりたいので日本国籍が必要という方や、日本人と結婚するにあたって帰化したいという方です。

日本生まれの特別永住者の方は、ほとんどの場合は申請すると許可される可能性が高いです。重罪などを犯していなければ、つまりごく普通に生活していれは、たいがいは許可されると感じます。

ただし、要件は緩和されているのですが、帰化申請の事務手続き自体は書類が簡単になるわけではありません。手続き方法はほとんど一般の外国人と同じで、例えば韓国生まれの韓国人とほぼ一緒です。逆に、日本に住んでいる期間が長いので、集める書類が多くなったりもします。

もっとも、集めるべき書類を集めて、申請書も正しく作って、帰化申請書類が受け付けられれば通常は許可されるはずです。ポイントは、添付書類集めと申請書作成といえます。

特別永住者の方が特に留意すべき点は、素行要件と生計要件の確認です。

1.素行要件

まず素行要件ですが、これは簡潔に言えば真面目な人かどうかということです。
具体的に言うと、次の2つになります。

① きちんと税金と年金を払っていること。
② 重大な交通違反や前科がないこと。

この素行要件について、会社員の方と、会社経営者・個人事業主の方とで分けて考えたいと思います。

1-1. 会社員の場合の税金と年金

①会社員の税金

企業に勤める会社員には、2種類の税金の納付方法があります。(ただし、個人に選択肢はありません。)
会社から支給される給与から天引きさる方法(特別徴収)と、ご自分で役所に支払を方法です。

給与明細を見たときに所得税や住民税といった税金が天引きされている方は、特別徴収ですので、特別に更に確認する必要はありません。しかし、普通徴収の方はご自分で税金を払わなければならないので、時々未納のままの方がいらっしゃいます。

税金が未納では帰化申請が許可されませんので、必ず完納するようにしてください。ご結婚している方は、配偶者の分も納税証明書を提出することになります。ご自身は税金を払っているけど、配偶者は税金を滞納していると、これも不許可の要因となりますのでご留意ください。

さらに、納税で注意していただきたいのは「扶養控除」です。ご自身の源泉徴収票を確認してください。例えば、ご自身の配偶者を扶養に入れる場合を考えてください。配偶者がアルバイトをしている場合などには、配偶者を扶養に入れているケースが多いと思います。扶養に入れれば、扶養者控除により、ご本人の税金が安くなりますので。
しかし、配偶者の年間収入が一定額以上だと、扶養に入れることはできません。
扶養に入れることはできない場合でも、入れてしまっていることが時たま有り、そのようなケースでは修正申告が必要になります。

もともと払っている税金が少なくなっていますので。これに関しても修正して追加納税し、未納なしの納税証明書を取得すれば問題ありません。

② 会社員の年金

勤務先が厚生年金保険に加入していて、給料から厚生年金保険料が天引きされている方は、特別に更に確認する必要はありません。しかし、勤務先が厚生年金保険に加入していない場合は、国民年金保険料を支払っている必要があります。

実は、国民年金保険料を全く払っていないという人も多いのです。
特別永住者だからといって国民年金保険料の支払い義務がなくなるわけではありません。

中には日本人ではないので払わなくていいと思っている方もいらっしゃるようですが、そうではありません。日本に住んでいる以上支払い義務があり、払っていない場合は帰化申請前に過去1年分を支払う必要があります。

本コラムの執筆時点では、とりあえず直近1年間の国民年金保険料を支払えば、帰化申請は可能です。

国民健康保険料は、1カ月あたり約1万8 千円くらいですから、1年だと20万くらいになります。一度に支払うには少し高めでしょうが、日本国籍を取得し、日本国民になるためには、国民の義務を果たしておく必要があります。

1-2. 会社経営者・個人事業主の場合の税金と年金

① 会社経営者・個人事業主の税金

会社経営者・個人事業主の方は、個人に課税される税金と法人に課税される各種税金をしっかり支払っていることが必要です。

②  会社経営者・個人事業主の年金

会社経営者・個人事業主の方は、会社として厚生年金保険加入義務のある場合は、厚生年金保険に加入しておかなければなりません。
会社として厚生年金保険に加入し、保険料を払っていることも帰化の要件となります。
法人として厚生年金保険に加入し、代表者であるご自身にも厚生年金を加入させる必要があります。

1-3. 交通違反と前科歴

次に交通違反と前科歴がないことですが、簡単に言えば警察につかまったことがあるかないかです。

車を運転する人で一番多いのは交通違反だと思います。交通違反については、基本的に過去5年間の違反経歴を見られます。
5年前から今までの交通違反があまりにも多いと審査に影響があります。
しかし、軽微な違反、例えば一時停止違反や路上駐車などであれば過去5年で5~6回程度でしたら問題とされない傾向にあります。

ただし、かなり交通違反が多い方でも許可になっているケースがあります。
過去5年間で10回でも許可になったケースがありました。明確な基準はないのですが、特別永住者の方については、交通違反についてだけは、一般の外国人よりも大目に見てくれるような傾向があるそうです。

前科に関しては、よくあるものとして、万引きや喧嘩(暴行)があると思います。
この場合は、おとがめなしの不起訴になっていれば、特段問題はありませんが、例えば10万円前後の罰金刑なら目安として2~3年、20万~30万前後の罰金刑なら3年から5年の経過が必要と考えられます。

この期間の経過後に、帰化申請を検討しましょう。

罰金刑などについては、特別永住者であるので、特別に数年の経過で帰化申請ができるようになるのであって、一般の就労系在留資格の外国人は、その犯罪行為によって在留資格の更新ができなくなる場合があります。つまり、帰国せざるをえなくなり帰化申請はできなくなるのです。
従い、特別永住者は、帰化申請に関しては要件面で優遇さる傾向にあります。

2.生計要件

生計要件とは、生計は成り立っているかを審査する項目です。

定収入などがあり、生計が成り立っていれば問題ありません。
しかし、中には借金がある方がいらっしゃるかも知れません。
例えばクレジットカードや消費者金融からの借入です。
とはいえ、たとえ借金があっても、普通に返せる額の範囲内であれば問題はありません。
また、自己破産を検討するような借金でないのであれば、これも問題はありません。
もちろん、自宅不動産のローンや自動車のローンも、普通に返済中であれば問題はありません。

特別永住者の方は、大概の場合は、この要件は緩和されます。

3.帰化申請をするために必要なその他の要件

帰化申請をするためには、素行要件と生計要件の他にも次のような必要な要件があります。

① 居住要件

居住要件とは、「引き続き5年以上日本に住所を有していること」を指します。
ただし、単純に5年間日本に住んでいただけでは要件は満たされません。

上記の要件に加えて、正社員・派遣社員・契約社員などの雇用形態で3年以上の就労をしている必要があります。アルバイトは含まれませんので、ご留意ください。

ただし、例外もあります。10年を超えて日本に居住している方については、就労期間が1年以上あれば、問題はありません。たとえば、留学などで日本に居住していた期間が8年ある方が就労の在留資格を取得して2年以上働いている場合などが該当します。

特別永住者の場合は、この居住要件も、大概の場合は基準が緩和されます。

② 能力要件

帰化するには、「18歳以上で本国法によって行為能力があること」が要件とされています。(国籍法第5条第1項第2号)

この要件には申請者の年齢が18歳以上であり、そのうえで母国の法律における成人年齢に達することが求められます。ただし、申請者が未成年でも、両親と共に申請を行う場合は問題ありません。

なお、特別永住者の場合は、この能力要件も大概の場合は基準が緩和されます。

③ 喪失要件(重国籍防止条件)

喪失要件とは、「国籍を有せず、または元の国籍を日本国籍の取得と同時に失うこと」を指します。

例えば、韓国人が帰化によって日本国籍を取得した場合、元々保有していた韓国籍は自動的に喪失される、ということです。このように、帰化前の国籍を失うことを承諾できれば、喪失要件を満たせます。

本人の意思で元の国籍を喪失することができない場合でも、実は例外はあります。その方が日本国民と婚姻関係にあるなど親族である、または何か特別な事情があると認められた場合は例外として、喪失条件が免除される可能性があります。

④ 思想要件

思想要件とは、日本政府を暴力で破壊しようと企てたり主張したりする政党・団体に所属・加入していないことを指し、テロリストや反社会的勢力(暴力団、過激派など)は帰化できないという、憲法遵守と反社会性がないことを求める要件です。

具体的には、テロリスト集団や暴力団に所属している人、またはそのような活動を行っている人は、帰化申請が許可されません。

⑤ 日本語能力要件

日本語能力要件とは、日本で生活するために必要な最低限の読み・書き・話すといった能力を持っている、ということです。
ここで求められる日本語力は明確な定義はなく、小学校3年生以上の水準であれば問題ないと言われます。しかし、最近では帰化申請の審査基準が高くなっており、書類審査も含めて日本語力でも厳しく判断されるため、従来以上に日本語力を養う必要があるでしょう。

4.帰化申請の所用期間

一般的に、帰化申請をしてから帰化が許可されるまで1年ほどかかります。
なお、必要書類の収集に1カ月半~3カ月ほどかかりますが、書類に不備があれば、さらに日にちを要し、トータルで1年半から2年以上かかる場合もあります。

帰化申請の流れは、申請→面接→結果受領、となります。それぞれの段階ごとにどのくらいの期間がかかるのか、詳しく見ていきましょう。

① 最初の申請の段階では、書類の取り寄せ・作成・チェックを行います。ここでだいたい1カ月半から2カ月ほどかかります。

② 書類の提出が済むと、次は面接です。ここでは、1回目の面接(面談のようなもの)と2回目の面接を行います。面接を全て終えるのに2カ月ほどかかります。

③ 以上のフローが完了すれば結果を受領するだけです。結果が出るまでは、2回目の面接から6カ月ほどかかります。

最近は必要書類が増えていることもあり、審査にかかる時間は長くなっており、1年間以上かかる場合もありますので、留意する必要があります。

5.韓国戸籍情報の取得方法と手続きに必要なもの

最後に、とくに在日韓国人の方向けに、韓国戸籍情報の取得方法と手続きに必要なもの確認します。

韓国戸籍情報と日本語訳の添付は、韓国籍の方が日本に帰化する際に必ず必要な書類です。

韓国戸籍情報(家族関係等証明書・除籍謄本)は、日本国内の韓国大使館または韓国領事館で取得可能です。

ただし、韓国大使館は東京にしかありませんので、地方在住の方は韓国領事館を利用しましょう。

交付申請では、「家族関係登録事項別証明書交付等申請書」を提出します。
これにより、次の5種類の証明書の交付ができます。
・基本証明書
・家族関係証明書
・婚姻関係証明書
・養子関係証明書
・親養子関係証明書

また取得の際には、本人確認書類・登録基準地(本籍地)情報などの提示が求められます。これにより、韓国の氏名・生年月日の他に、申請者本人の本籍地の確認をします。
登録基準地(本籍地)情報に関しては、最小行政区画まで必要ですのでご留意ください。

事前に「家族関係登録事項別証明書交付等申請書」に記載して、持参するのも良いかもしれません。

戸籍を取得できるのは本人の他に、父母・配偶者・祖父母などの親族です。ただし、兄弟姉妹では取得できません。また、委任状を持つ代理人でも請求は可能です。

即日で戸籍を交付してくれることがあるのは、駐日本国大韓民国大使館領事部、駐大阪韓国総領事館、駐福岡韓国総領事館の3つのみです。それ以外のところでは一週間以上かかりますので、時間には余裕を持って、早めに手続きをするのがよいでしょう。

5.おわりに

以上、在日韓国人(特別永住者)の帰化要件(簡易帰化)について、見てきました。

在日韓国人(特別永住者)は、居住要件、生計要件、能力要件の審査基準が緩和されます。

また、韓国籍の方は、韓国大使館や韓国領事館で、必要書類のひとつである戸籍の取得ができます。

帰化申請をしようと考えたときに、このコラムを参考にしてみてください。

【注意】本コラムは、令和7年12月時点での情報に基づき作成しています。

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