
日本人と結婚した方の帰化申請
行政書士 永井国際法務事務所
VISA申請や帰化申請にまつわる内容を中心に連載形式のコラムです
日本人と結婚して日本に暮らす外国人の中には、「この日本でずっと暮らしたい」「家族と同じ国籍になりたい」と考える方も少なくありません。
日本に住んでいる外国人が、本国の国籍を失い、日本国籍を取得することを「帰化」と言いますが、「帰化」の申請をするためには、ある一定の要件が必要です。
しかし、日本人配偶者を持つ外国人は「簡易帰化」の対象となり、一般の帰化よりも要件が大幅に緩和されています。
大幅に緩和されるとはいえ、「何年住めば帰化できる?」「収入が少なくても大丈夫?」「過去に在留期限を過ぎたことがある」など、注意すべき点も多くあります。
このコラムでは、日本人と結婚した外国人の帰化条件・注意点を整理して確認します。
1.日本人の配偶者の帰化は「簡易帰化」の対象
日本人の配偶者として日本で暮らす外国人は、通常よりも短い期間で帰化できる「簡易帰化」の対象になります。まずは帰化の要件条件をみてみましょう。
「日本人の配偶者等」の在留資格で日本に在留する外国人は、他の在留資格の外国人が帰化申請するときよりも要件が緩和される部分があります。
① 日本人と婚姻後、引き続き3年以上日本に住んでいる。(居住要件)
② 日本人と婚姻後3年を経過し、引き続き1年以上日本に住んでいる。(居住要件)
③ これ以外にも、日常生活に支障のない程度の日本語、生活習慣への適応能力(能力要件)
つまり、日本人の配偶者の帰化は、原則的な帰化要件のうち居住要件と能力要件が緩和されます。
一般的な帰化申請では「引き続き5年以上日本に住んでいること」が求められます。
しかし、日本人の配偶者の場合は、居住要件が3年に短縮される「簡易帰化」の対象です。
国籍法第7条では、以下のような条件を定めています。
| 区分 | 条件 | 備考 |
| 日本人の配偶者たる外国人 | 日本に3年以上継続居住していること | 就労・留学歴も通算可 |
| 日本人の配偶者たる外国人 | 結婚から3年以上、日本に住所を1年以上有すること | 国内外での結婚期間の通算可 |
たとえば、留学や就労で3年以上日本に滞在していた外国人が、日本人と結婚した場合、その時点で居住要件を満たすことになります。
また、海外で日本人と結婚したケースでも、結婚生活が3年以上続き、日本で1年以上暮らしていれば帰化が可能です。
2.オーバーステイ経験がある場合は注意
日本人の配偶者であっても、過去にオーバーステイ(在留期限超過)があると、すぐには帰化できません。オーバーステイがあったときからの経過年数や日頃の適切な生活態度が重要です。
オーバーステイとは、在留資格の期限を過ぎても日本に滞在してしまうことです。
これは出入国管理法違反(不法在留)であり、帰化審査では大きなマイナス要因になります。
その理由は2つあります。
① 在留資格が切れた時点で「継続的な居住」が途切れるため、居住要件を満たさなくなること。
② 素行要件(法を守る態度)にも違反するためです。
ただし、日本人と結婚した場合、在留特別許可を受けて日本に留まることができます。
しかし、この特別許可を得てもすぐに帰化できるわけではなく、10年以上の安定した滞在実績が必要とされます。
つまり、通常の「普通帰化」と同等の審査になります。
オーバーステイ経験者の帰化は「誠実に在留を続け、税金・年金を適正に納めているか」が重視されます。
申請前に、自分の過去の在留履歴を整理し、必要であれば行政書士に相談して対策を立てましょう。
3.年金と納税の履歴は必ずチェック
年金・税金の支払い状況は「素行要件」の確認項目です。
未納や滞納があると不許可になることもあるため、留意が必要です。
帰化審査では、「日本で社会的責任を果たしているか」が問われます。
その代表例が、年金と税金の支払い状況です。
特に、年金については次のように整理できます。
| 状況 | 対応 | 帰化審査での扱い |
| 日本人配偶者の扶養に入っている | 第3号被保険者として支払い不要 | 不問 |
| 日本人配偶者の扶養に入っていない | 自分で国民年金を支払う必要あり | 未納があると不利 |
| 自営業の場合 | 国民年金+国民健康保険料の納付が必要 | 未払いは不許可の原因 |
たとえ、「日本人の配偶者等」で在留していても、年金未納は「社会的義務を果たしていない」とみなされます。
また、税金(住民税・所得税・国民健康保険料など)の納付も同様に重視されます。
配偶者の扶養に入っている場合でも、世帯単位で納税が確認されます。
もし未払いがある場合は、帰化申請前に完済し、領収書や納税証明書を提出できる状態にしておきましょう。
帰化審査では、これを「誠実な生活態度」として評価するケースが多くあります。
4.生計要件の考え方
働いていなくても、家計が安定していれば問題ありません。生計要件は「世帯単位」で判断されるため、配偶者の収入も考慮されます。
生計要件とは、「経済的に安定した生活を送れているか」を確認するものです。帰化審査では個人単位ではなく、世帯全体の収入と支出のバランスで判断されます。
つまり、日本人配偶者が家計を支えている場合、外国人配偶者が専業主婦・主夫であっても問題はありません。
妊娠・出産・育児などの家庭内の貢献も社会的役割として認められています。
| 家計状況 | 審査の目安 | 備考 |
| 世帯年収300万円以上 | 十分に安定 | この程度で許可される可能性大 |
| 月収20万円前後 | 可 | 公的扶助に頼っていなければ許可される可能性 |
| 配偶者のみ就労 | 可 | 世帯として生活できていれば要件クリア |
審査の際に確認されるのは「継続的な安定性」です。
短期的な収入増減よりも、毎月の家賃・公共料金・食費などが無理なく賄えていることが重視されます。
5.帰化申請の流れ
帰化申請の流れは、次のようになります。
| 帰化申請の流れ | |
| STEP 1 | 法務局に相談予約の電話を入れる |
| STEP 2 | 法務局で事前相談(提出書類の指示あり) |
| STEP 3 | 書類収集をし、法務局で再度相談 |
| STEP 4 | 申請書を作成し、法務局で最終確認 |
| STEP 5 | 書類を申請し、受理してもらう |
| STEP6 | 面接日時の連絡および面接 |
| STEP 7 | 審査 |
| STEP 8 | 帰化申請許可がおりる |
① 【STEP1】法務局に相談予約の電話を入れる
法務局に相談予約の電話(平日午前8時30分~17時15分まで)をするところから、帰化申請は始まります。
法務局を直接訪問しても受け付けて貰えませんので、まずはお住まいのエリアがどこの法務局に属しているのかを調べ、相談日時を予約する必要があります。
② 【STEP2】法務局で事前相談(提出書類を指示される)
予約した日時に合わせて、管轄の法務局に事前相談に行きます。
この相談の場で、ご自身が帰化申請するための条件にあてはまるのかどうかを、法務局の方に判断してもらい、可能であれば帰化申請に必要な提出書類の指示がでます。
相談の所要時間は、1時間程度です。
③ 【STEP3】書類収集をし、法務局で再度相談
法務局で指示された収集書類がすべて準備できましたら、法務局に相談予約を再度取り、書類を持参します。
担当官に書類の確認をしてもらいますが、この確認にかかる時間が1~2時間程度になります。
また、書類収集には母国での証明書請求が含まれる場合もあるため、翻訳・郵送の手間を考慮し、早めの準備をおすすめします。
④ 【STEP4】申請書を作成し、法務局で最終確認
法務局で渡された「帰化許可申請の手引き」を参考にしながら、帰化申請に必要な申請書類を作成していきます。
その後、書類に不備がないかどうか、法務局に書類を持参し確認してもらいます。
法務局での確認にかかる時間は、1~2時間程度となります。
書類に不備がなければ、申請受付日時を決定してもらいます。
⑤ 【STEP5】書類を申請し、受理してもらう
決められた日時に法務局に行き、帰化の申請書類の受理をしてもらいます。
この申請書類の受理に要する時間は、1時間程度です。
⑥ 【STEP6】面接日時の連絡および面接
帰化申請の受理が終わって、約2~3か月後に法務局から面接実施の連絡が来ます。
決められた日時に法務局へ出頭し、面接を行います。
面接には配偶者の同席を指示されることがあるようです。
面接に要する時間は、1時間程度です。
⑦ 【STEP7】審査
法務局があなたの提出した書類をもとに、事実確認を取っていく審査期間になります。
この期間中に、追加で書類を出すように指示されたり、申請者への追加質問がされる場合もあります。
その時は指示に速やかに従いましょう。
この期間は、あなたの勤務先への調査や、日本人配偶者の実家への訪問などもあるようです。そのようなことがあっても良いように、心の準備をしておきましょう。
⑧ 【STEP8】許可が決まる
申請してから許可が出るまで:1年半ほどです。
法務局から帰化申請の許可が下りた旨の連絡があります。
6.まとめ
日本人と結婚した外国人の帰化は、他の在留資格よりも条件が緩和され、比較的スムーズに進みます。
しかし、在留期間・年金・税金・オーバーステイ履歴など、基本的な生活要件が整っていないと不許可になる可能性もあります。
国際結婚をきっかけに帰化を希望する方も増えており、家庭の状況に合わせた柔軟なサポートが求められています。
夫婦のどちらかが主な収入を得ていれば、専業主婦・主夫でも問題ありません。
「自分の条件で帰化できるか不安」「書類が多すぎて準備が大変」と感じる方は、専門家のサポートを活用しましょう。
【注意】本コラムは、令和7年12月時点での情報に基づき作成しています。
